以前、ボディメカニクスが力学として成立していない上に利用者を「物体」と捉えるという限定的条件でのみ有効というお話をしました。
実際、ボディメカニクスを教科書通りに出来ている人でも
ああああ…腰痛い…
といって
欲しいものを我慢して高級なコルセットにマネーを支払わなければならないのが現状です。
そして腰痛でダウンした時には
ボディメカニクスが出来てない!
という有難いお言葉をいただけます。
そう、教科書通り100点満点でもです。
10年近く前に
米国看護協会からボディメカニクスなんて限定的な環境でしか使えないしそもそも腰痛予防に何の効果もねぇよってパンフレットや国際標準化機構の報告書で発表があったじゃないか!!
日本ではその事に触れる人が少ないですね。
ボディメカニクス推ししたら、いったいいくらのバックが頂けるんだい?
と勘繰りたくもなります。
じゃあ、正しいボディメカニクスってどんなよ?
そもそも正しいボディメカニクスって何でしょう?
能書きはいい…
教科書通りにやりなさいよ!
はい、これも一つの答えですね。
色々な教科書が色々な出版社から出ています。
最近は写真等を用いて視覚的にもわかりやすく作られていて写真を見れば概ね
あー、こういう風にするのね…
という造りになっています。
…えっと…
この画像の通りにやってたら、いくら体をくっつけ様が、いくら姿勢を低く保とうが、いくら基底面積を広く取ろうが腰痛になって当然。
背中が丸まっているんじゃ…
柔道を思い浮かべてみてください。
乱捕りでも試合でも意識して胸を張りますよね?
頭を下げるのは論外として、前傾するよりも胸を張った方が技を喰らいにくく攻撃も素早く出来ると考えられています。
立礼でも座礼でも単に正座するにしても背筋を伸ばすのが基本ですから。
こんなへっぴり腰でやってたら
君はやる気があるのかね?
そんなへっぴり腰では指導受けて不利に働くではないか!
と先輩の有難い愛のムチを食らっちゃいますね。
軽量級の人は組み手の勝負が激しく猫背というか前傾姿勢っぽくなりますが…
どんな風に力が掛かってるの?
腰痛が起きるか否かを判定するのに第四、第五腰椎の椎間板に作用する圧迫力(FC)の大きさに着目する場合が多いそうです。
ネットで見つけた計算式をもとに作図してみました。
腰付近の〇が椎間板(L4/L5)でFAが腹圧となります。
当然、本来はここに動作時の加速度等を考慮していかないといけませんね。
LSやFMはどう測定するの?
…という話は置いておいて、θが増せばFCの値が増す事がわかりますね?
つまり背中を丸めれば腰への負担が増すばかりという事です。
あれだけ力学力学言ってた割には淡白な説明だ…
という声が聞こえそうですが、正直これ以上式を複雑にしても見る気うせるでしょ?
重要なのは地球上にいる以上、物理法則が適用されていて、それを意識すれば腰にかかる負担を好きなように分散させる事ができるって事。
何で教科書の例が変な写真なの?
本に載せるんだから、もっとこう良い写真に差し替えたらいいのに…
と思わず言いそうになりそうですね。
実際、冒頭の教科書等の状況で背筋を伸ばす方法を考えてみれば良いですね。
不可能であるか逆に他の部分を痛めそうなくらい無理な姿勢になって力の入れようがない状況となります。
この事は全米看護協会も指摘して、ボディメカニクスが有用ではないと主張しています。
これに輪をかけて
利用者のベッドに膝をつくのは失礼だ!
利用者のベッドに腰かけての介助なんて失礼極まりないと思わないか?
といった出典不明の礼節などが絡んできて、余計過酷な状況となる事が多いですね。
厚生労働省は「膝を付くとか、腰痛予防の観点からやるべき」と言ってるんですけどね。
ボディメカニクスは限定的条件下でのみ有効であって、多くの場合は別の手法を模索した方がスマートであると言えます。
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